インターネットでの地域メディアの運営ノウハウを共有する連載の6回目を迎えました。立ち上げる前に、もう一つ必ず考えなければならないことがあります。それは地域メディアを立ち上げるに際して、「ビジネスとして運営していくのか否か」という点です。

地域メディアは「ビジネス」か「趣味」か

一般社団法人地域インターネット新聞社で編集長をつとめている西村健太郎です。

これまで5回の連載では、地域メディアとは一体何なのかという根本的な部分から、何のために立ち上げるのかといった目標・目的まで考えてきましたが、立ち上げる前の「概念的な話」は今回で最後ですので、あと1回お付き合いください。

地域メディアを立ち上げる前に、目標や目的のほかに、もう一つ考えておかなければならないことが、

ビジネスとして「地域メディア」を運営するのか否か

という点です。

言い換えれば、個人や法人に関わらず「収益事業としてやるのかどうか」を検討するということです。

もし、運営にかかる全費用を自分で負担し、趣味で運営するのでしたら、この点を考える必要はありません。

「派手で儲かるもの」という勘違い

そもそも「地域メディア」は儲かるものなのでしょうか?

メディアというだけで、大手新聞社やテレビ局をイメージしてしまうためか、小さな地域メディアであっても「派手で儲かるもの」と勘違いする人が一定数います。

少しでも何らかの中小メディアに関わった人でしたら、苦笑するしかない思い違いなのですが、こうした“勘違い”こそが新たなメディアを生み出してきた原動力でもあります。

勘違いの源となるメディア事業に対する固定観念は、次のようなイメージではないでしょうか。

常にニュースとなる中心部にいて、社会性が高く知名度も高いので、当然儲かる可能性がありそう――

確かにこのようなイメージで見ると、メディアがきわめて将来性の高い重要な事業にも思えてきますが、ごく一部の大手メディアを除けば、実態は大きく異なります

収入を得る手段は3種類しかない

メディアが儲かるの否かを考えるうえで、収入という面から見ていきましょう。

メディア運営で何らかの収入を得るためには、

販売/広告/寄付(投資)・または持ち出し

の3種類しかありません。これは大手メディアも地域メディアも大きく変わりません。

大手メディアは「不動産業」や「文化事業」といった関連事業も入ってきて、特に街の中心部にある自社ビルなどを活用した不動産関連業は大いに儲かっているようですが、これは“メディア”ではなく、“メディア企業”としての事業なので省きます。

まず、「販売」というのは、

販売=新聞や雑誌といったメディアそのものを売ること

で、モノを作って誰かに売る、という“商売”なので非常に分かりやすいでしょう。

ただ、紙の時代は実際に手渡しできる“モノ”があったから売りやすかったのですが、

インターネットのメディアは「紙」のように“モノ”がない(見えづらい)

ので、“情報”自体を売る、という形が一般的です。大手新聞社の「電子版」がその一例です。

一番わかりやすいのが「広告」を売ること

一方、「広告」は、新聞や雑誌の“スペース”やテレビ放送の“時間”といった「枠」を売るもので、これも分かりやすい。

インターネット上でもバナー広告の枠などを売っているため、紙もネットも概念はほとんど変わりません。

ただ、ネットの世界ではグーグルアドセンス(Google AdSense)に代表されるように、見る人に応じて最適化された(と思われる)広告が自動的に配信され、読者にクリックされた時点で「売上」になるという「成果報酬型」のシステムが主流です。

「紙」や電波を使ったテレビ局のように、売ったら終わり、というケースは少なく、

ネット広告の多くは成果がないとお金が入らない

という点が紙や電波のテレビの売り方とは異なります。

「寄付」や「投資」を募る手段もあるが…

寄付(投資)・持ち出し」は、販売も行わず、広告も売らないというメディアが運営費を得るために「寄付」や「投資」を募ったり、会社・団体内のお金(事業費)を使ったりすることです。これは、収益事業(ビジネス)とは言えない部分もあります。

企業が顧客へPRするために無料配布している「PRメディア」などは、PR費や広報費などとして“持ち出し”で作られることが多く、たとえば、新幹線や特急列車の車内に置いてあるような情報誌もそれにあたるでしょう。これはメディアビジネスとは言いづらく、

企業(団体)の広報・顧客サービス

と位置付けられそうです。

一方、カッコ内に書いた「投資」は、

将来的に儲かる可能性が高いビジネスとして、立ち上げ時や発展させる際に安定運用までのお金を集める、ということです。ここで役立つのが、先ほど述べたメディアに対する“勘違い”です。

メディアは恰好良くて儲かりそう

とイメージがあるためか、メディアに対して投資してくれる個人や企業などが一定数存在します。

新しいITテクノロジーもメディアに盛り込み、「世界市場を狙える画期的なメディア」などというイメージでも作れれば、お金の使い道に困っている投資家からさらに多くのお金が集められるかもしれません。米FacebookやTwitter、日本のmixiなどのSNSも参加型の“メディア”の一つだと考えれば、投資したくなる気持ちが湧いてくるはずです。

「寄付」は投資のようにリターンを伴わないもので、日本ではあまり一般的ではありません。行政や公益団体からの「補助金」や「支援金」といった存在のほうが身近と言えるかもしれません。

ビジネスを発展させるために投資を受け入れることはともかく、継続的に発展を目指すビジネスを行ううえでは、寄付や支援に頼る手段はなじまないといえます。

ネットでの「販売」=「有料の会員制サイト」

地域メディアをビジネスとして事業化するには、先ほど書いた「販売」をするか、「広告」を売るか、あるいは「投資」を募るか、ということが中心になります。

投資を募ることについては、投資会社に相談するか、異業種交流会あたりで投資してくれそうな経営層を探したほうが有益なので、ここでは省き、地域メディアのビジネスとして「販売」「広告」の可能性に絞って紹介します。

まず「販売」の可能性から考えていきましょう。

「紙」の時代は“販売するモノ”があったので分かりやすかったのですが、ネットの場合はありません。地域メディアにとっては、「有料の会員制サイト」を作って会員権(会費徴収)を売る、という形が一般的かもしれません。

その際、会費としてどのくらいのお金を払ってくれるものでしょうか。

たとえば、大手新聞社の電子版は、紙の新聞が売れなくなると不都合なので紙と同じ料金にしているケースが目立ちますが、日本の電子新聞で一番会員数が多いといわれる「日本経済新聞電子版」の場合で1カ月あたりの料金は4200円(2017年2月現在)です。

果たして、地域メディアに1カ月4200円も払ってくれる人がいるのかどうかを考えてみましょう。

仮に1カ月4200円として、100人の会員を集めると収入は42万円ですが、全国メディアのように対象エリアの人口がそれほど多くないなかで、月に4200円を支払ってくれる人がどれだけいるのかを検討しなければなりません。

そして、1カ月40万円超の収入で

100人の会員を満足させる情報価値

を出せるのかどうかも難しい点です。

たとえば、誰も知ることがない人事情報をいち早く伝えるとか、酒席でしか知りえないような極秘動向を伝えてくれるとか、そういっためずらしい情報になら4200円くらいは払ってくれるかもしれませんが、ビジネスとしては非常に難しいと思われます。

情報を入手するにはそれなりのノウハウとお金が必要だからです。なにより、地域メディアにそうした情報が必要なのかどうかも疑問です。

もし、有料版の地域サイトを中心にビジネスを行うのでしたら、画期的な独自ビジネスモデルを作るための熟慮が必要です。

地域の「ネット広告」を売るのは難しい

「広告」を売るというのは、今も一番メジャーで手軽なビジネスモデルです。

“売る側”“買う側”の双方に

「広告」という商品を理解できない人はいない

という理解度の高さもあり、大手メディアから小さな地域メディアまで、広告販売は誰もが採用しているビジネスモデルです。

先ほどの「販売」では、ネットではモノがないため難しいことに触れましたが、広告についてもそれは同様で、紙やテレビ電波の枠を“売る”ことと比べると、ネットの枠を売るのは少しやっかいです。

地域の経営者や商店主などには“紙しか見ない層”が一定数おり、バーチャル上にあるメディアの存在を理解できず、一から説明しなければなりません。特に地域を対象としたメディアを運営する以上は、この点は覚悟しなければなりません。

一方で、ネットに詳しい層からはPV(ページビュー)など数値の大小と広告の成果を問われます。

なにより、ネットに熟知した企業や経営者は、わざわざ地域メディアに広告を出稿するよりも、クリック数に応じてしか広告料金を支払わなくていい「グーグルアドワーズ(Google AdWords)」で積極的なPRを行っていることでしょう。

「紙」の時代は、広告の成果を問われづらく、成果を測るのも難しかったため、売った側も買った側も過剰に成果を求めるというよりも、

広告によって知名度を上げる

とか

社名や商品名を浸透させる

などの理由で広告を買っていたか、あるいは広告営業担当者の熱意や口車によって購入していたかの側面が強かったように思われます。

テレビの電波販売(CM)も同様で、CMを流してもどのくらいの人に見られたのかが不透明です。BS放送を中心に「通販」のCMが極端に多くなっているのは、“購入”や“電話”などの形で成果が見えやすいからかもしれません。

小規模な地域メディアの枠を使った広告を売るためには、グーグルなどの成果報酬型広告よりも、

・地域メディアの広告が優れている理由

・単なる「成果」だけでは表せない価値

を提示できるか否かがポイントとなります。数字だけで比較されると、大手のネットメディアにかなわないからです。

グーグルに広告枠を売る「アドセンス」

ネットメディアにとって、広告の「枠」を売る対象は、エリア周辺の企業や団体だけにはとどまりません。

グーグルなどの“広告業者”に枠を売る

という方法が一般的になっています。紙の時代で言えば「広告代理店」に枠を売るようなものです。

グーグルアドセンス (Google AdSense)の 案内ページ

グーグルは世界的な検索サイトの事業者として知られていますが、収益の多くは「広告販売」で得ています。それが成果報酬型広告の「グーグルアドワーズ(Google AdWords)」です。

自らのサイトの「枠」を売りたい運営者に対しては、「グーグルアドセンス(Google AdSense)」と呼ばれるシステムが用意されており、個人から法人・団体までサイトを持っている運営者は誰でも参加し、広告配信を受けることができます。

先ほど書いたように、ネット広告を企業や団体に一から販売していくのはなかなか難しい、それならばグーグルが仲介しましょう――というシステムで、グーグルが「広告代理店」となって、全国(全世界)の企業や団体から広告を集め、グーグルアドセンスに参加しているサイトに広告を流すという仕組みです。

なお、このグーグルアドセンスでは、広告を掲載しただけでは収入にならず、閲覧者(読者)がクリックした時点で“広告料”が入ってくるシステムです。

広告の内容によって大きく異なりますが、

1クリックされると50円くらいが入るイメージ

です。もちろん、カードローンなどの金融商品や不動産関連の広告では1クリックの単価が高くなりますし、若干怪しげな業種・業態・商品の広告も同様に高い単価になっているケースが目立ちます。逆に見栄えの良い“無害”の広告は安い単価となります。

一般的に閲覧者が「広告」をクリックする確率は1%とも言われていますが、サイトのそこら中に広告を貼ればクリックしてもらえる率は高くなりますし、広告の露出が少なければクリック率が低くなります。

スマートフォンでは、画面をいくら移動させてもずっと出てくるような広告を出しておけば、クリック率は高まるでしょう。

当然、読者(閲覧者)は不快になりますが、広告収入を追求したいなら「クリックさせるように誘導」することが重要ですし、若干怪しげな広告を載せれば収入も増えます。ただし、読者から「怪しいサイトだ」とのイメージを持たれるリスクはあります。

また、地域メディアの場合は、

地域とあまり関係のない広告が大半

となるため、メディア内容と広告内容がまったく合っていない、という状況も起こるため、この点もリスクと言えそうです。

加えて「1クリック50円=クリック率1%」(※あくまでも仮定の数字)で計算してみますと、

10,000ページビュー(PV=表示回数)=5,000円

という収入にしかならず、“お小遣い稼ぎ”ならこれも悪くない収入ですが、グーグルアドセンスの収入だけでは、ビジネスとしては厳しいかもしれません。

ちなみに、私が運営している「横浜日吉新聞」もアドセンスに参加して収入を得ていますが、「広告は読者にとって目障り」という方針から広告枠をできうる限り減らし、“怪しげな広告”や“不快な広告”も次々と排除していきました。

そのためか当初からクリック率は1%にほど遠い数字で、最近はどんどん下がって0.5%にも満たない状態。単価も1クリック50円にはまったく及びません

つまり「1クリック50円=クリック率1%」はあくまでも“仮定の数字”で、それより低くなることが多々あるということです。

地域メディアとしては推奨できない手法が多いのですが、クリック率や単価を上げるためのノウハウについては、ネット上に多く載っていますので、そちらを参照してみてください。

なお、グーグルアドセンス以外にも、広告を掲載してクリックした人が何かを買った時点で一定の収入が得られる「アフィリエイト」という形の広告プログラムもあり、こちらも比較的手軽に参加できます。

ただし、売れるかどうかは不透明で、相当な努力と露出が必要であることは間違いありません。

地域メディアが進出していない理由

地域メディアをビジネス化するうえで欠かせない「販売」と「広告」という“収入手段”について考えてみましたが、いずれも「そう簡単ではない」ということが理解できたかと思います。

もし地域メディアが儲かるビジネスであるならば、どこの地域にも多数のメディアが参入しているはずなのに、1つもなかったり、あったとしても“本業”は別のところに持っていたりするはずです。

ここから見えてくるのは、

地域メディアは、儲からない、もしくは儲けづらいビジネス

ということが言えます。

かつて「紙」の時代には、地域で徹底的に広告を販売し、その収入だけで新興市場に上場できるほどに力を付けた地域メディア企業もありましたが、これは情報受発信の手段が「紙」しかなく、参入障壁が高かった時代の産物です。

「紙」を読む人が年々減り、情報を受発信するコストも価値も限りなくフリー(ゼロ円)となるなかで、今からこれらの企業と同じビジネスを真似するのは困難です。

では、ネットの地域メディアはどうすれば成功できるのでしょうか。

ネットメディアの「成功モデル」とは

地域メディアではありませんが、ネットメディアを運営するうえで、覚えておきたい事例が一つあります。

近年、東証一部に上場する新興のIT企業(ネット系IT企業)がネットメディア事業に進出し、「医療情報サイト」を運営していたことがありました。

このメディアは、外部の“アルバイト”を安価で雇って、ネット上にある他のコンテンツ(記事)から無断転載やコピペなどを通じてコンテンツを大量生産し、多くの人を集めたうえで、美容や健康といった単価の高い広告をクリックさせて収益を上げていました。

著作権や情報の信ぴょう性を無視する姿勢は大きな批判を浴び、結果として閉鎖に追い込まれましたが、

金をかけずに人(閲覧者)を集め、単価の高い広告をクリックさせる

という考え方は、決してめずらしいことではなく、ネットメディアの「成功モデル」とされている傾向があります。

伝統的な新聞社や出版社系が運営するネットメディア以外では、コンテンツ(記事)の内容よりも、とにかく「人を集められるか否か」が最重要視されています。

どこかから転載したような「コピペすれすれの記事」やクリックしてもらうための大げさな見出しや、目を引くような写真が多いのはそのためです。

ネット地域メディアに成功モデルなし

一方、ネットの地域メディアで「金をかけずに人を集め、単価の高い広告をクリックさせる」という“成功モデル”を援用するのは非常に難しいのが現実です。

地域という範囲では、情報発信をしている人が圧倒的に少ないため、たとえコピペや転載の手口を用いようにも、その元となるコンテンツ(記事)がないため、時間をかけて情報を掘り出すか、自ら書くかしかありません。そうするとかなりの手間がかかり、場合によっては人件費もかかります。

加えて、地域の情報を欲している人に、単価の高い健康や美容、カードローンの広告を出してもクリックされづらいので、どうしても広告単価は安くなりがちです。唯一、広告単価が高くなる可能性があるのは、不動産関連の広告や求人くらいでしょう。「同じエリアに住んでいる」ということ以外では、嗜好やニーズなどの共通点は多くありません。

なにより、単価が高いからといって、読者が不快になりそうな広告ばかり載せていると、広い支持を集めることは難しくなるでしょう。

ネットの地域メディアに参入する企業がきわめて少ないのは、ネットメディアの“成功モデル”がほとんど通用しないためで、参入に二の足を踏んでいるといえます。儲からないと分かっているのに参入する企業や団体は、通常ないはずです。

対象とする地域の規模は決して大きくはなく、さらにはビジネスの成功モデルもないなかで参入している企業や団体は、ネット地域メディアの新たなビジネスモデルを自ら築き上げようとしているか、あるいは紙時代のように「力技」で広告販売に邁進する、または“本業”との相乗効果を狙って“持ち出し”を覚悟する、といった考えがあるのではないでしょうか。

私がやっている「横浜日吉新聞」では、他に“本業”は持っていないため、ネット地域メディアが本業ということになります。とはいえ、現時点で新しいビジネスモデル(運営モデル)を築けたというわけではなく、少ない自己資金を“溶かし”ながらも、運営を継続できる形を模索している状況です。

今は構築途中で成功しているとは言えないため、横浜日吉新聞のビジネスモデルを紹介できるまでにはいたっていませんが、一定の方向性が見えた時点で、こちらでも一つのモデルとしてご紹介したいと思います。