地域メディアの作り方(第1回):なぜこの連載を始めたのか(筆者紹介)

地域インターネット新聞社では、2018年1月15日から「地域メディアの作り方」というテーマで連載を始めることになりました。

2015年7月から続けているインターネットでの地域メディアの運営ノウハウを広く共有することで、さまざまな地域でメディアが立ち上がるきっかけとなることを期待し、定期的に書いてまいります。

今回は第1回ということで自己紹介をさせていただきます。

筆者についての自己紹介

横浜市の「端」にある日吉の位置図
※横浜市IR説明会資料
「横浜市の市政と財政運営」
の地図を一部加工

一般社団法人地域インターネット新聞社で編集長をつとめている西村健太郎と申します。

横浜市のもっとも東京(川崎)寄りにある日吉という場所で「横浜日吉新聞」と、新幹線の駅で知られる新横浜エリアでは「新横浜新聞~しんよこ新聞」の2つのインターネットメディアを運営しています。このほか、首都圏でも他企業からの委託という形で幾つかのメディアを運営してきました。

自ら住む横浜の日吉で、サラリーマンのかたわら「横浜日吉新聞」を立ち上げたことがきっかけで、会社を辞めて法人化することになり、現在にいたっています。

もともとは会社員として、20年超にわたって「紙」を使ったさまざまなメディア運営に携わっており、直近では都心にある出版社などで「IT分野」に関するメディア発行業務に携わっていました。

1990年代後半からインターネットやネットメディアの普及を横目で見ながらも、旧来の「紙」を使ったメディアを長年続けてきたことで、紙メディアの良さを理解するとともに、ビジネスモデルの限界も痛感。

そのかたわら、紙メディア発行の「附帯的な仕事」として、または「趣味の世界」でインターネットに触れ続け、こちらも20年近くの時間を費やしています。

「ベッドタウン」の情報はほとんどない

横浜の端”にある日吉という場所は、慶應義塾大学のキャンパスが置かれていることで首都圏では広く知られており、東京都心へも比較的近いことから、住宅地としても人気の高いエリアですが、都心へ通う会社員の「ベッドタウン」であるという側面も強く持っています。

私も“ベッドタウン族”の一人で、平日は朝早くに都心へ出掛け、夜遅くに帰る生活を続けていましたので、地域のことを知る機会はほとんどありませんし、土日や夜間にスーパーやコンビニへ行く以外は地域との接点もほぼ皆無でした。

ところが子どもが生まれたことで、保育園や病院、公園、地域の祭りなど少しずつ地域との接点が増えていき、さらに今流行の“働き方改革”によって、3~4年前の会社員時代から平日も在宅する機会も次第に増えていきました。

「働き方改革」で家にいる時間が増える

最近では自宅やカフェといった会社オフィス以外での勤務は、国が先導する形で「働き方改革」などと名付けられて世間的な認知度が上がりつつあります。

ただ、当時の私は単に会社の仕事が忙しくて回らなくなり、「都心のオフィスへ行く時間がない」「インターネット環境とパソコンさえあれば仕事はできる」との理由で、業務の拠点を会社オフィスだけでなく自宅や自宅周辺にも拡大。それに伴って、近所の情報を知りたいという思いも強まってきました。

しかし、どんなメディアも東京都心中心(特に山手線内)に動いていますので、ベッドタウンである近所の情報はほとんど流通していません。あったとしても、海に近い横浜中心部、いわゆる“おしゃれなヨコハマ”の内容が多数。横浜市民ながらその端に住み、都心へ通勤する「横浜都民」にとっては少しばかり異世界にさえ思える情報です。

この頃、人工知能などの技術を使って、インターネット上のさまざまなニュースを個人好みに配信してくれるスマートフォンアプリ(たとえば「スマートニュース」など)が幾つか誕生し、あらゆる情報がより個人の嗜好に近い形で簡単に手に入れられるようになってきたのに、自ら住む近所や周辺の内容はほとんど流れて来ません。さすがの人工知能もインターネット上に存在しないものは配信しようがない、ということだろうと思います。

私は情報を集めて発信するということを仕事として20年近くやってきて、インターネットなら情報受発信にそれほどお金がかからないということだけは分かっていましたので、「自分が欲しい情報は自分で集めるしかない、どうせなら同じ境遇にある人と共有しよう」と、ごく個人的な理由から「横浜日吉新聞」と名付けて、地域メディアを立ち上げたのが2015年7月のことでした。

地域メディアへのニーズは意外に高い

会社員の片手間で、ほぼ趣味のような形で地域の情報を発信し始めたのですが、この2年半ほどの間に趣味では済まないほどに読まれるようになり、法人化も経て、求められる役割も大きくなっています。

この間には「自分も地元でやってみたかった」「どうやって作るのか」「どのように運営しているのか」といった問い合わせや支援の依頼が数多くあったり、私が発信している情報とほぼ類似の記事内容で情報発信を行う人も出てきたり、地域メディアに対するニーズが高いことも感じていますが、実際にやり始める人は非常に少ない。色んな地域で情報を流通させるために、まずは一歩を踏み出してほしい、と願っています。

また、こうしたメディアを運営できているのは、インターネット上で提供されているフリーウェア(無料ソフトの類)であるブログシステム(ワードプレスなど)などがなければ難しかったのも事実です。

本来であればそうしたフリーウェアに対し、無料使用者としてお金以外での貢献をしなければならないのですが、使うだけで精いっぱいなので、機能を改善したり不具合を探したりということもできません。

こうしたフリーウェアを使って何ができたのか、何ができるのかの「活用事例」を広く共有することで、ほんの少しでも開発者の役に立てればとの思いもあります。

そのため、これまでに得られたノウハウをできうる限り広く公開していくことで、感謝の気持ちを表したいと思っています。

ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

(※)本連載に関するご質問やご意見はこちらからお気軽にお寄せください